ツマグロヒョウモン

この蝶は本来は南方系ですが、近年中部地方から関東地方へ分布を広げています。温暖化と公園や家庭などで食草になるパンジーなどのスミレ類の栽培が広がっているのが原因と考えられます。
このサイトの対象である奥多摩地区では1960年代に3例の記録があるのみでした。2000年標高1600mの三窪高原の展望台でツマグロヒョウモンの2頭のオスがテリトリーを張っており、時々近くへ来るキアゲハを追いかけているのを見つけました。他のヒョウモンチョウ類は短時間アザミなどで吸蜜しては飛び去ってしまうので、撮影するのは簡単ではありませんが、この蝶はテリトリーを張る場合にはじっとしているので割合容易でした。

その後東京都の平野部でたびたび観察されるようになり、現在ではヒョウモンチョウ類のなかでは最も普通に観察されるようになっています。

後翅の縁の黒色部や前翅の裏が赤みを帯びていることで容易に他のヒョウモンチョウ類と区別することができます。メスは前翅の先端部が黒化した中に白い帯が入り鳥などに嫌われるカバマダラに擬態していると考えられています。

[参考資料]「ウスバシロ」第24号、p.13、西多摩昆虫同好会(2001)